注)この小説は第二部開始直後を舞台設定とした
  パラレル小説です。
  話の本筋にからむようなネタバレはありませんが、
  少しでも原作コミック収録前のネタバレを避けたい人は
  19巻発売後にお読みください
  

まえがき
(02.07.04)

ヒカルの碁第153局で、
新キャラの関西棋院にてプロ試験に受かった子
(通称:関西ジャ●ーズ(笑))が登場することが
あきらかになり、美形か?美形か?美形なのか?
と、そこを重点に盛り上がっている今日この頃(笑)
このお話を書いている時点では、どういう子なのか
まったくあきらかにされていませんが、
勝手に「関西から関ジャニがやってきた(笑)」という
設定でお話を書いてみました。
これを書いている時点での来週号(WJ32号)で
正体があきらかになりそうな感じもありますが、
そんなことは完全に無視して関ジャニ小説。
どうしよう、関西から来る子が、上島くんみたいな
顔していたら・・・。


関ジャニ!と騒いでいるわりには
内容はいたって真面目だったりするので
真面目健全でもOKって人は
読んでださると嬉しいです。

登場人物
ヒカル・アキラ・関ジャニ
市河さん・北島さん


3ページあります。
ではではどうぞ。

-1-


「ダメだったらダメ!」
 ドアを開けていきなりの市河の声に、ヒカルは思わず「わぁ!」と声をあげてあとずさった。
「キミ、中学生でしょ!ここは中学生がお金を賭けて
 碁を打つようなところじゃないの!」
 見ると、カウンターで受付嬢の市河が見たことのない少年と対峙していた。
「いーじゃん。お姉さんに迷惑かけないよ。
 オレ、せっかくはるばる兵庫から来たんだし、一局ぐらい打って帰る」
「だったらここは碁会所なんだから、普通にお金を払って
 普通に打っていけばいいでしょう?」
「そんなのつまんないよ。
 オレは塔矢アキラに会いに来たんだ。
 その塔矢アキラが来ないんだったらせめて賭け碁でもして
 ここまでの交通費の元取らなきゃ」
「だったらそういう碁会所行きなさい!
 とにかくここはダメ!」
「カタイ姉ちゃんだなあ〜。嫁の貰い手ないだろ?」
「な、なんですって〜!」


 怒りが沸点に達した市河を軽く受け流すようにそっぽを向いた少年とヒカルの目があった。
 同い年ぐらいだろうか。
 パーカーとGパンというラフな格好を何気に上手く着崩して、ヒカルが(あ、いいな〜)と思うようなスニーカーを履いている。

「あれ?碁会所に子供なんて珍しいな。
 へ〜さすが塔矢先生の碁会所、お子様も通える
 品行方性碁会所なんだ」
 棋院の帰りにアキラがいるだろうか、と塔矢先生経営の碁会所に来てみたのだが、いきなりの無礼な言いぐさの少年に短気なヒカルは反射的に言い返す。
「な、なんだよいきなり!オマエだって子供じゃん!」
「なあ、オレと五千円かけて碁を打たないか?」
「え?」
 さらりとかわされてヒカルは勢いの行き場をなくす。
「置石、5つぐらいやってもいーぜ。
 どうだ?それともお子様だから五千円なんて
 お小遣いありません、って?」
「置石5つだって?ふざけんな!オレが5つ置かせてやるよ!
 よし、そこで勝負・・・」
「進藤くん!」
 条件反射で行動しがちなヒカルの口を市河が受付簿で遮った。
「お金かけるなら進藤くんでも出て行ってもらうわよ!」
 有無を言わさぬ語気。
 市河、強し。
「進藤?」
 少年が、受付簿を押しのけてヒカルの顔を覗き込んできた。
「進藤ヒカル初段?」
「あ、ああ」
「へえ・・・。
 塔矢先生との新初段シリーズでヘボ碁打った進藤か」
 グッとヒカルは言葉につまる。
 あの碁は、佐為が打った。15目半のハンデを背負って。
 あの時の碁はひどかったと、今でも時々言われることがある。
 そのたびに、小さな胸の痛みを伴ってヒカルはそれを思い出す。
「しかもずっと手合サボってたって有名な」
「・・・おまえ、なんなんだよ」
 一方的に自分を知っている少年にヒカルは気分が悪くなる。
「オレは藤間トオル。中三。
 今年の関西棋院のプロ試験に合格して4月からプロだ。
 ヨロシク、先輩」
 そう言って少年―トオル―はにっこり微笑んだ。

「十代の棋士だったら塔矢アキラが一番だって
 皆が口をそろえて言うからさ。
 一度、手合わしてみたかったんだよね。
 オレ、関西だし、低段者同士だけど対戦の機会なんてあんま
 なさそうだろ?だからさ、塔矢先生が経営している碁会所に
 塔矢アキラはよくいるって聞いたから来たんだ。
 公式手合じゃなくても塔矢アキラを倒しておけば、
 プロになる前にハクがつくってもんじゃん?」
 アイスコーヒーを生意気にもブラックで飲みながら、トオルは軽い口調でそう言った。
 結局、ヒカルとトオルはとりあえず向かい合って席に座って飲み物を飲んでいる状態である。
「塔矢を倒す?」
 コーラを飲みながらヒカルは聞き捨てならない言葉を聞き返す。
「そ。塔矢アキラを倒しに来た」
 ちょっと散歩に、というような口調で言われてヒカルよりも先に碁会所の客・塔矢アキラ後援会会長(自称)の北島が
「アキラくんを倒すだと?!何生意気言ってんだ!
 無理だ無理無理!」
 とトオルに詰め寄った。
(塔矢のこととなるとすぐムキになるよな、このおじさん・・・)
 と思いながらもヒカルは逆に冷静になってトオルを見た。
「塔矢は強いぜ?」
「そうだろうな。でなきゃ倒しがいがない」
 口元の笑みには余裕が見えて、ヒカルの神経をザラザラと逆撫でした。
「オマエに塔矢の強さがわかってたまるか!」
「ま、確かに打ってみないとわからないけどな。
 でもオレも強いぜ?」
 その目を見て、ヒカルは一瞬加賀を思い出した。
 佐為は言った。
『あの者には勝負強さを感じる』
 トオルの目はそういう、目だ。
「じゃあ、オレと一局勝負しようぜ?
 オレに勝ったら、『塔矢より強い』って言うの許してやる」
 ヒカルは碁笥に手を添える。
「おいおい馬鹿言ってんじゃねえよ。
 オマエに勝ったくらいでアキラくんより強いなんて勘違い
 されちゃたまんねえよ!」
 北島が再び口を挟む。
「オレは塔矢のライバルだ!」
「オマエなんかアキラくんのライバル名乗るのは早すぎる!」
「塔矢だって認めてんだ!おじさんが何言ったって
 オレは、塔矢のライバル!」
「へー。塔矢アキラのライバルなんだ?」
 ズズズーっとアイスコーヒーの終わりを吸い込む音をストローで立てながら、トオルは相変わらずの緊張感のない声で言った。
「ふーん。あんな碁を打つヤツをライバルと思うなんて
 たいしたことないのかな、塔矢アキラ」
「なんだとぉ!?」
 低段者の棋譜は記録されない。トオルが知るヒカルの碁は新初段シリーズがすべてだ。
「ほら見ろ!オマエのせいでアキラくんの価値が
 下がってるじゃねえか!」
 北島市場、塔矢株価下落にやはり黙っていられない北島である。
 ヒカルはヒカルで、あの碁は自分の碁じゃないと反論も出来ずに歯がゆい思いを溜め込んでいた。
「たいしたことないかどうか、オレと打ってから決めろ!」
 ヒカルはもう一方の碁笥をトオルに押しやる。
「わかったよ、打ってやろうじゃん。
 で、いくら賭ける?五千でいいか?」
 ふりだしに戻ってしまった。
 市河が耳ざとくこちらを見た。
「打とう、って言ってるだけだ。賭ける必要なんかねえよ」
「じゃ、打たない。
 オレ、金にならない碁はやらねえんだ」
 トオルは碁笥をヒカルに押し返す。
「あ、それともオレも一応プロになるし、
 有料で指導碁なら打ってやるぜ?
 それならあそこの姉ちゃんもうるさいこと言わないだろうし」
「さっきからなんだよ、カネカネカネカネって!
 オマエ、金儲けのためにプロになったのかよ!」
「そうだよ」
 間髪いれずに返ってきたトオルの言葉にヒカルは思わず言葉を失う。
「オレがなれそうな職業で、一番金になりそうだから
 プロ棋士になったんだ」


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